それでいい

本と映画を中心とした何か、気が向いたものだけ

とわの庭 小川糸

夜空には、わたしだけの星座が、生まれ続ける。優しい言葉ですね。

帯からは想像もつかないほど重い話でした。想像を絶するような、しかしそれを捜索だとは簡単に否定できないような現実味のある苦難。人が持つ生きることへのエネルギーはそれはもう強いもので、目が見えなくても、母からネグレクトを受けても、初恋の人に利用されても、決してなくなるものではないんでしょう。どれほど辛いときでも、周りを見渡してみれば一人は手を差し伸べてくれる人がいるものなのかもしれませんね。

本作品で気に入っているところは、何といっても匂いや音の表現が多いところです。僕自身、そういった表現が見たくて本作を手に取ったところはあるので満足できました。

タイトル通り、庭というものを介した十和子と人の、母と魔女のマリさんと、リヒトと、ジョイとの繋がり。それらはいろいろな経緯はありますが、根本はとっても温かいものなので、そういうものが好きな方にはおすすめです。一方で、それらはやはりフィクションらしくあり、都合のよさは否めません。前半の辛い雰囲気が好きな方には後半は少々退屈に感じられるかもしれません(十和子があまりに強いこと、優しい人ばかりなこと)(少数派でしょうが)。個人的には前半が心に残った故に、後半が少々陳腐に感じられて残念でした。最後に母と会わないところは好き。